ヘルメス学派神学、アルケミー、シャーマニズムとアルカイック・リヴァイヴァル
ヨーロッパの歴史を通して「異教」として排斥迫害されたものの中には、私が「古典神学」と呼ぶ、古代エジプトにつながる、キリスト教より古い神学体系が含まれている。
これはアレクサンドリアの大図書館が焼き打ちに遭うまでは、古今の智恵の伝統を統合した体系として学ばれ教えられていたものだ。
この体系においては、「自然」は神の表象であり、具現であり、神の「体(からだ)」そのものである。自然の中の要素はすべて、樹木も花も動物も、空も大地も海も、そして人間も、その魂だけでなく肉体も含めて、宇宙の秩序と神性の体現だ。
自然の中の生きとし生けるもの、自然の中に存在するすべてのものは神聖であり、「神」という全体の一部である。この思想はまた、アルケミー(精神的錬金術、魂の進化の階梯を金の精練過程に喩える伝統)の理解と実践の源流でもある。
(「アストラル界、生命の輝きと光の性質」から)
アルケミーとは
人間が「天と地の架け橋」となるためのプロセス
人は、天(エネルギー世界・精神的領域)と地(物質世界)の二つの世界に生きる存在です。人間として生きることは、必然的にこの二つの世界の架け橋となることを意味します。
すべての人は、故郷であるより高い世界の記憶を意識のどこかに抱きながら、この地上で肉体をもって生きています。
しかし精神性と物質性の乖離のおびただしい現代においては、多くの人はこの事実を忘れ、「目に見え、手に触れることのできる」世界だけを唯一の「現実」として、物質レベルでのニーズを満たし、限られた現実の中で生きることに人生を費しています。
けれども、人は、物質的に恵まれた生を営むだけでは、また自分自身の幸せを追求するだけでは幸せにはなれないことに、人生の道のりのどこかで気づきます。
人間であることの意味とは、単に物質的に成功し個人的な幸せを享受することだけではない。
人間として生きる意味は、「人間」という存在形態がもてるすべての可能性を花開かせるために努力し、同時にそれによって、世界とそこに生きるすべての生命の幸せに貢献することなしには満たされ得ない。
人の内には、より高い世界の記憶とそこにおける自己の存在を憧憬としてとどめる本質(エセンティア)が息づき、その本質にはすべての生命への畏敬が刻みこまれている。これがSchool of Healing Arts and Sciencesの土台となる理念です。
そうしてこの自己の本質を目覚めさせ、それを自己存在のあらゆる部分(肉体から魂、エネルギーの各レベル)に浸透させ、その視点から生きること。
それが人間としてのもっとも充実した生き方であり、そのためのたくさんの鍵が、人類が古代から受け継いできた遺産の中にはちりばめられている。
それらを受け継ぎ、また掘り起こし、新しい時代の光のもとに新たに形をとらせることが、今この時代のパラダイムの転換期において必要とされています。
同時に天と地の間に存在する複数の領域にまたがり自由に生きることを学ぶ過程は、真の超越(すべての存在のレベルで統合的に生きること)への道のりの土台となるものでもあります。
このような理念と理想に基づいて、School of Healing Arts and Sciencesは、人間存在としての可能性を追求しながら生き、より高く深く人生の意味を理解し、なにより自己の生を通して自らを含むすべての生命の癒し、成長、進化に貢献するをことを望む人々のための学びとコミュニティ形成の場となることを意図します。
同時に教育啓蒙活動と実践的な奉仕活動を通して、新しい時代の精神性と価値観を、地に足のついた形で体現し広げていくことを目指します。
人間存在としての可能性を追求するために
バランスされることが必要な5つの領域
SHAS では、人間存在として最大限の可能性を追求するためには、以下の5つの領域をバランスさせることが必要だと考えます。
1 精神的に成長するための知識、精神的存在としての自己の本質、自己の人生の目的や使命、魂の向かうべきところを知る能力、物質世界を超越する能力(上へ向かう力、空へ伸びる力)
2 自己の夢や人生の目的を現実のものにする能力、エネルギーを物質世界にグラウンディングさせ形をとらせる能力(下へ向かう力、大地に根付く力)。物質レベルでの活動能力、肉体を健康に維持し、それを最大限に活用し、また楽しむ能力
3 自己の内面を豊かにする道筋、外部世界から得た経験を自己の内に内在化する能力(内へ向かう力、自己の魂を満たす力)
4 社会ないし人類に対する奉仕、外部世界と関係を持ち、愛に満ちた形で自己を表現する能力(外へ向かう力、他の魂とのつながりを築く力)
5 自らの魂を通して1〜4を自己に統合するためのトランスフォーメイション/アルケミカル・プロセス(1〜4の中心であり、器ともなる「溶鉱炉」、Crucible、Heart of Alchemy)
これらの領域をバランスよく満たし、十分な力がそこに蓄えられる時、「アルケミーの溶鉱炉」と呼ばれる魂の器が形成され、人としての進化の次の段階へ駆け上がるのための過程が開始されることになります。
人間であることは、神聖な炎としての精神と、その器である肉体、その虹の架け橋である魂を調和させて生きることを学ぶ過程です。
SHAS のスクールとコミュニティは、自らその旅路を歩みつつ、そのことによって他者が同じ道を歩むのを助けるための光を灯し続け、個々の魂の内にある神性/本質(エセンティア)を思い出し、また他者が思い出す手助けをしながら、ともに歩んでいくことを学ぶ場です。
SHAS におけるフラワーエッセンス・プラクティショナーとは、この旅路において、とくに自然、とりわけ植物との関係を通して、魂の変容の過程を理解し、自然からの恵みを活用することを知るアルケミスト。
ヒーラーとは、人間の肉体を自然法則の完璧な体現であり魂の神聖な宮居として見、精神性、魂と肉体の関わりの視点から、道を歩む手助けをする者であると表現することができます。
特定の分野に専門化せず、それぞれの持ち場で光の運び手として働くことを選ぶのはライトワーカーです。その役割は母親として家庭の中になっても、社会に必要とされるさまざまな職業や創造活動を通しても果たすことができます。
いずれにおいても、天と地の法則性を理解し、その中で自由に活動し、エネルギーと物質の様々な要素を理解して活用する能力が必要とされるのです。
SHAS のアルケミー神学
School of Healing Arts and Sciencesのすべての教育・訓練プログラムは、古(いにしえ)の時代から受け継がれ、古代ギリシャの時代にヘルメス派神学(アルケミー神学)として結実した伝統の教えである、「人間という存在=肉体+魂+精神(スピリット)」という考え方に基づいています。
神学科は、この智恵の流れにつながり、過去2000年の間、顕教(公の教え)と秘教(隠された教え)という形で分割、分散させられた流れを繋ぎ合わせ、本来あるべき全体的な形に近づけ、同時に魚座から水瓶座時代の過渡期にふさわしい形に移し替えつつ、この流れを次の世代につなぎ受け渡していく作業に携わることを望む人のための専門訓練課程です。
School of Healing Arts and Sciencesの基礎・中級の講座では、この伝統からひかれた知識と教えは、各所にちりばめられています。
それによって講義を聴く人が、自分自身でそれを集め直し、形にしていくことで、より深い気づきと学びを得ることができるためです。これは、より深い学びに入るための「器(うつわ)」の形成ステップでもあります。
専門課程では、そのようにして学んだことを、実際の生活、仕事、人生の長期的な道筋通して実践に移していきます。とりわけ、大地と肉体にしっかり根を張り、自分が理解したことや内的なヴィジョンを、物質世界において形にする力を育てることが強調されます。
神学科では、その道筋に沿い実際に自分の人生を生きることを通して築かれた土台の上に、高い世界のヴィジョンを、地に足がつき安定した形で自らの内におろし、それに基づいて、智恵の流れを繋ぎ合わせる作業に加わり、同時に奉仕や教育活動を通して社会に貢献していくための理解と力を身に付けます。
神学科のクラスは対面またはWebクラスとして実施され、一部は統合エネルギー療法科やフラワーエッセンス療法科の専門課程学生にも解放されています。
専門課程としての神学科の教育と訓練の大きな部分を占めるのは、実際の教育・奉仕活動やプロジェクトを通しての経験的学びと、道の先達に当たるスーパーヴァイザーからの指導です。
神学科への入学は、統合エネルギー療法科の卒業者の中から招待が送られます 。
神学科(専門課程/研究科レベル)の訓練プログラム
・在籍費、年限等はなし
・実地訓練(基礎・中級の対面クラスにスタッフとして参加)
・グループの器を形成、維持することを学ぶ
・神学を学ぶ者の視点から個人やグループのエネルギーを把握し、それをまとめたり影響を与えること、およびそれに伴う精神的・エネルギー的な責任について学ぶ
・神学を学ぶ者の視点から自分自身のエネルギー、言葉や行動を管理することを学ぶ
・ヘルメス派神学を学ぶ者の視点から、精神的カウンセリングの仕方にについて学ぶ
・エネルギーと物質面の両方でクラスやグループの運営について学び、自分の担う領域で「人を教え、導いていく」ことについて学ぶ
・能動的な形で「知恵の伝統」を受け継ぎ、受け渡していく責任と自分の担う領域について考える
・(卒業条件)これらの経験と自分自身の奉仕活動/対社会活動を通して学んだことを、プロジェクト(論文、作品)にまとめ、公開する
参考
アルケミー神学講座
最初のヘルメス派神学とアルケミー学の講義は遠隔講座「古典神学 I、II、III、IV」として教えられました。下記はそのシラバスです。
現在は、ヘルメス派神学とアルケミー学の基礎は、オンラインクラスのアルケミー系講座として教えられています。
対面クラスでは、2回にわたり京都で実施された「神聖な空間 エネルギーの感じ方、読み方、組み立て方」などがこのカテゴリのクラスです。
「古典神学 I」
アルケミーの歴史と伝統について学びます。アルケミーとは、人間と自然/宇宙の間のつながりについて理解し、それを日々の生活や生き方の中に生かしていくための体系的な知識と知恵です。
普遍的な精神性は「自分を含むすべての生命が神聖でかけがえのないもの」だと感じる内的な感覚から来ます。古代エジプトのように、人々がこの明晰な内的感覚から生きていた時代には、心と肉体、宗教と科学の間に乖離はありませんでした。
人間と自然/宇宙の中には同じ一つの法則が流れ、自然を理解することで人間を、人間を理解することで自然を理解することができると、聖職者、科学者、医者も、一般の人々も、みな知っていたからです。有名なヘルメス・トリスメギストゥスの言葉「As above, so below(天上に在りたるごとく、地上にも在り)」は、この理解を端的に表現しています。
しかし過去2千年の間に、この知識と知恵の体系は分断され、アルケミーの体系は人類の歴史から見えない場所へ隠されていきました。この「失われた知恵の体系」を、歴史や秘教、隠された文献などの中から掘り起こし学んでいくことが、この講座の目的です。
「古典神学 I」では、アルケミーの歴史とともに、「四大元素」とそれに基づく自然と人間の理解など、アルケミーの基本的な知識を学びます。またアルケミーの伝統が、どのようにヒーリングやフラワーエッセンスとつながるかについても見ていきます。
「古典神学 II、III、IV」
「古典神学 I」で学んだ内容をもとに、人間存在の在り方、四大元素や図形の象徴学・元型学などアルケミーの土台となる知識、智恵の伝統につながる重要な文献についての講義、エネルギー・メディテーションの手法を用いた体験実習、各自で行う自宅実習課題などを進めていきます。
購読課題
古典神学 I
・『Hermetica(ヘルメス文書)』(抜粋翻訳は受講者に配布)
・『タリズマン(上)』『タリズマン(下)』グラハム・ハンコック&ロバート・ボーヴァル
・『アトランティスの暗号』コリン・ウィルソン
・(推薦)パラケルスス 『奇跡の医書』
古典神学 II、III、IV(古典神学 I の課題に文献を追加)
・パラケルスス 『奇跡の医書』『奇蹟の医の糧—医学の四つの基礎「哲学・天文学・錬金術・医師倫理」の構想』
・ウォルフガング・ゲーテ 『自然と象徴 自然科学論集』『形態と象徴 緑の自然科学』『色彩論』から1冊以上
・ルパート・シェルドレイク 『生命のニューサイエンス — 形態形成場と行動の進化』
・リン・マクタガート 『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』 『意志のサイエンス』
・ジョーゼフ・キャンベル 『神話の力』
・自分に興味のある地域(日本、中国、エジプト、シュメール、インド、ギリシャ、南北アメリカ、ケルト、アフリカなど)の神話集、5冊以上
・コリン・ウイルソン 『アウトサイダー』『至高体験 自己実現のための心理学』『右脳の冒険 内宇宙への道』『フランケンシュタインの城—意識のメカニズム』『超越意志の探求 自己実現のための意識獲得』から2冊以上
・(推薦)カルロス・カスタネダ 『呪術師と私 —- ドン・ファンの教え 』
・(推薦、歴史研究)フランセス・イエイツの著作から興味のあるもの『薔薇十字の覚醒』『フリーメイソンと錬金術』『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』など
・(推薦、思想研究)D. P. ウォーカー 『ルネサンスの魔術思想』
・その他、学習と課題を進めていくのに役立つインターネット上のリソースを随時指定(とくに英語の文献など)
特別テーマ集中研修
専門課程の学生、卒業生、およSHASの枠組みに沿って長期的に学んできた人たちを対象に、特別なテーマを扱う集中研修です。
基本的に現場で仕事をするヒーラー/プラクティショナー、神学科在籍者のための専門的内容ですが、テーマによっては、アートやクラフト、音楽など創造的な分野で仕事をする人も参加できるものがあります。
目に見えない世界との取り組みやチャネリング、スピリットガイドとの共同作業などの特殊な訓練が含まれる研修では、精神面の安定性が確認されていることが参加の必要条件となります。
このため、専門課程の学生と卒業生以外では、数年以上にわたり定期で心理療法を受けている、普段からガイダンスやメディテーションを実践しているといった背景が必要な場合もあります。
参加条件は各研修ごとに指定されます。
参考 過去の特別集中研修テーマ
「ヒーラーのためのアストラル界との取り組み ヒーリングの現場における実践」(ボルネオ島)
目に見えない世界の中でも、私たちともっとも関わりの深いアストラル界。
物質世界と重なるようにして存在するその領域には、低いレベルから高いレベルまで、幽霊や憑依霊などといわれる死者の魂、妖精など自然界の知的生命、人間の思考や感情によって作り出される思念体などさまざまなエネルギー存在が住み、日常的に私たちの思考や感情に影響を与えています。
古代には人々はこれらの領域を感じとり、そこに住む存在たちと意図的に関わることをしていました。しかし時代が下り、人々の意識と感覚が閉ざされ、物質レベルのみに限定されていった近代・西洋文化圏では、それは単なる「迷信」や「思い込み」、あるいは「無意識の働き」として片付けられるようになっています。
しかし、それによってアストラル界の存在自体がなくなったわけではありません。現代人はその存在について無知であり、影響について無意識である分、むしろアストラル界からの影響を受けやすくなっているということさえできます。
他方でエネルギー的に感覚を開き、仕事を始める時、多くのヒーラーは望むと望まざるに関わらず、この領域に足を踏み入れます。
それは依頼者のオーラフィールドの中にはまり込んだり絡みついているアストラル・レベルの生き物や物体だったり、過去の記憶の断片がエネルギー的な形をとったものであったりします。
またチャクラとチャクラを結ぶ紐のようなエネルギーのコードであったり、あるいはヒーリングの手助けをしてくれるこのレベルのスピリットガイド(守護者、助力者)であったりします。
この集中研修では、エネルギーレベルの現実であるアストラルの領域について、迷信的な部分を取り払いつつ、現場で仕事をするヒーラーにとって役立つ形で、現実的な形で理解し、感覚を開き、向かい合うことを始めていきます。
これが初めてのアストラルヒーリングの実技クラスになる人は、アストラルレベルのエネルギーを体感し、「手応え」を出すことから始め、自分自身をアストラルヒーリングのために準備し、何種類かの簡単なヒーリングを行うことを学びます。
経験者は進度に応じて、チャクラコードのヒーリングを含む追加の実技を学んでいきます。
クラスはSchool of Healing Arts and Sciencesでアストラル界についてのトピックを含むWebクラス、エネルギー心理学、関係性エネルギーヒーリング・クラスなどの受講歴があることと、ヒーリングの実技クラスに出ていることを前提に進められます。
「スピリットガイドとのコミュニケーションと共同作業」(高野山)
3回目の高野山・集中研修に当たる2013年は、Web講座の「ガイダンス:スピリットガイドとのコミュニケーション」クラスをベースに、スピリットガイド(目に見えない導き手や助力者たち)との個人的な関係を確立し、共同作業をすることについて集中的に取り組みます。
厳しい冬に鍛えられた静謐な自然環境と、1,000年以上にわたり使い込まれた修行と祈りのエネルギーは、目に見えない世界とのコンタクトを経験をするのにとても適してます。
このため、高野山の研修では、ガイダンス(ガイド/目に見えない導き手や助力者たちとのコミュニケーション)や、ハンズオンヒーリングでのガイドとの共同作業(自分の手を通してガイドが作業を行うタイプのヒーリング)を学ぶことを行ってきています。
研修ではハンズオンヒーリングでの共同作業を中心に取り組んでいきますが、ここで経験、体得されたことは、ボディワークやアートなど各自の専門分野でも応用することができます。